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「米国商標登録出願の要領」

ここでは、米国の商標登録出願について、具体的な流れ・要領について触れてみます。

  • まず、出願作業をとり進める場合、一番大切な事は米国商標庁の商標データ・ベースを検索して、先行類似商標が存在するか否かを調査することです。 それだけではありません、米国では日本と違って、登録されていない商標が実際に市場で使用されている場合、大きな問題となりますので、Webの検索 エンジンなどを利用して、そのような未登録商標が存在するのか否かを調査する必要があります。 アメリカは大きな国ですので、ある州のみ、もしくはある地域でひっそりと使用されている場合もあれば、複数の州にまたがって使用されている可能性もあります。 当然ながら、使用の規模が大きければ大きいほど、問題が大きくなるわけです。 調査についての詳しい情報は「商標出願の実務」項目をご覧ください。
  • 事前調査の結果が良ければ、出願の手続きに入るわけですが、現在、米国商標庁では、3つの料金体系があります。 従来どおり願書を郵送して出願する場合は、1商標1分類で $375の出願費となり、電子出願の場合(TEAS)で指定商品もしくは役務は自由に表現することを希望する場合は $325 の出願費、そして米国商標庁の指定商品・役務の表現を使用する場合は (TEAS-Plus) $275 の出願費となります。 通常の場合はすべて TEAS-Plus で出願するのが最適です。
  • 出願後の審査でよく問題になるのは、商標そのものの識別力と先行商標の存在です。 出願が上記の理由で拒絶された場合は、米国商標弁護士による反論・意見書を提出することになります。 この場合は、一般的に少なくても $1000~$1500 の費用が発生するものとお考え下さい。 この金額は現地の商標事務所だけのものです。 その他の補正指令については、ほとんどの場合、ある程度の経験があれば、出願人自身でも簡単に処理できるものです。 もちろん出願時に十分準備をしておけば、そのような補正指令を未然に防ぐことも可能です。 補正指令の対象となる事項は相当の数がありますが、それらの詳しい情報は「商標出願の実務」をご覧下さい。
  • 出願が使用ベースである場合もしくは日本登録を基にする Section 44 (e) 出願の場合は、審査が無事に終了すれは公告となり、他者からの異議がなければ登録の運びとなります。 米国商標庁は、日本のように登録費用を 請求いたしません。
  • 出願が使用意思に基づくものであれば、公告後、他者からの異議がなければ、登録許可通知が下り、その日から数えて 6ヶ月以内に使用陳述書(使用宣誓書とも呼ばれます)を提出するか、もしくはその提出期限延長を申請することになります。 当初の 6ヶ月以内に使用陳述書の提出が実現するのであれば、費用的には特に問題がありませんが、仮に 2度、3度以上の期限延長を申請しなければならない場合には、出願維持費用が相当なものになります。 期限延長申請の手続きは(合計 5回の延長が可能)簡単なものですが、現地代理人の費用は数百ドル、そして米国商標庁の期限延長申請費用が1分類につき $150 必要です。 なお、使用陳述書の提出費用は1分類につき $100 で、現地代理人の費用は数百ドルあたりになるのが一般的です。
  • 使用陳述書が受理された後は、登録証の発行となります。ところで、この使用陳述書の提出には注意をする必要があります。 と言いますのは、一度、使用陳述書を提出した後は、それを撤回することは許させておりません。 言い換えますと、提出した使用陳述書の中の使用証明資料に不備があった場合、 その提出期限内に、期限延長申請書が提出されていなかった場合には、当初、使用陳述書が提出された日付より以前に存在した使用証明資料は提出することが可能ですが、その日付より後に存在する新しい使用証明資料は提出することができません。 そのため、提出日もしくはその以前に存在した使用証明資料がない場合には、出願は自動的に放棄されたものとして扱われることになります。 この規定で一度は泣かされたことのあるプロの数は決して少ないとは言えません。
  • 従って、使用陳述書の内容は絶対に間違いがないように、また、使用証明となる資料などにも絶対に不備がないようにしなければなりません。 もしなんらかの不備が予想される場合は、使用陳述書を提出するときには、その期限以内に必ず期限延長申請も提出することが賢明です。 期限延長申請が提出されていた場合には、その新しい期限までに存在する使用証明資料を提出することができますので、出願放棄となる事を未然に防ぐことができるわけです。 もちろん、使用証明資料に問題が皆無である場合は、あえて期限延長申請を提出しないことも頻繁にあります。 これは担当者の判断に任せることになるでしょう。
  • 2~3ヶ月ほどで、商標庁から連絡が入りますが、使用証明・陳述書が受理されると、その後、登録証の発行となります。 登録後は、日本とは違い、登録後の5年と6年の一年間の間に、再度の使用陳述書の提出( 8 条宣誓)が義務づけられております。 この場合、登録証に記載されている商品・役務の再吟味が必要となります。 もし、いずれかの商品・役務に関して商標の使用が登録後、停止された場合・もしくは使用が開始されなかった場合は、それらの商品・役務をすべて削除しなければなりません。 削除することを忘れた場合には、その忘れ方にもよりますが、故意に削除することを怠ったとされた場合には、他者から、登録取消審判を受けた場合、そのクラスのすべての商品に対する登録が抹消されることになります。 この規定(登録後のみならず、登録時にも適用される)については、最近、裁判所で審理があり、以前ほど厳しく適用されない方向に動いているようですが、あえて危険を冒すことは避けた方が賢明と思われます。
  • 8 条宣誓、もしくは 15 条宣誓のあとは、登録後、9年目と10年目に更新することになります。 更新時にはやはり使用証明・陳述書の提出が必要となります。 15条宣誓とは、商標の使用(米国で)が5年間継続的にあった場合に、オプションとして、その宣誓書を提出することができる取り決めです。 この15条宣誓が終わっていると、商標登録自体が単なる手続き上の不備で登録取り消しにならないように防御することが可能になります。ただし、ここでは、手続き上の不備等の理由ですので、不正行為 (Fraud) や悪意によって登録した場合には適用されません。

以上が、簡単な米国商標登録出願の流れです。